2025/6/4
【起業家人材インタビュー02】ボランティアからビジネスへ:土佐塩の道を未来に紡ぐ挑戦」
株式会社アルファドライブ高知では、2030年長期経営ビジョンとして「高知から、100の新規事業と300の起業家人材を生み出す」を掲げ、高知県様をはじめ、産学官の様々な方とともに活動をしています。2024年も高知で挑戦する多くの方々と出会い、その成長を支援してきました。
第2弾は、「こうちスタートアップパーク」の起業支援プログラムに参加された、近藤かおり氏のインタビュー記事です。近藤さんは、歴史文化財である「土佐塩の道」を守るボランティア活動からスタートし、それを持続可能なものにするため、観光コンテンツ化およびビジネス化を目指して挑戦を続けています。そんな彼女の想いと取り組みに迫ります。
※「こうちスタートアップパーク」は、高知県が主催する起業支援のプラットフォームであり、株式会社アルファドライブは起業支援業務の受託業者です。
「土佐塩の道」での活動について
ーー近藤さんが「土佐塩の道」に魅了されたきっかけは何ですか?
20代で結婚し、ごく普通の主婦として暮らしていましたが、夫が亡くなり、子供とともに高知にUターンして家族を支えていかないといけない環境に一変しました。子育てと仕事を両立させながら生活を支えるという日々でしたが、子供が成長するにつれて、「いつか自分が本当に打ち込める仕事につきたい」、「ライフワークとなるような活動をしたい」と心の中で求めるようになっていました。そんな流れの中、40代で地元の観光協会に就職して、「土佐塩の道」に出会うことになりました。
「土佐塩の道」は江戸時代以前から続く歴史ある道で、赤岡町と物部町を結び、地域の生活を支えてきた命の道です。この道は、時代と共に一時期は途絶えていたのですが、地域住民によって再生され守られてきた貴重な地域資源です。
400年の時代を超えて、過去から未来へ続いてゆく「土佐塩の道」は、単なる歴史遺産、自然豊かな古道の保存というだけでなく、道に関わる人々の様々な想いによって支えられ、次世代へと継承していくべき物語がたくさん刻まれている道でした。塩の道を守ることは、地域のアイデンティティの保存だと考えています。この想いが私を「土佐塩の道」の活動への奔走に導いていると思います。
※土佐塩の道とは
「塩の生産地と奥地をつなぐ交易道は「塩の道」と呼ばれ、生活物資などの運搬道としても利用されていました。赤岡町から物部町の塩峯公士方神社まで約30kmのルートは、長きに渡り人々の生活を支えてきた命の道。平成14年から周辺住民らによる整備が進められ、平成16年には(一社)日本ウォーキング協会が選定する「美しい日本の歩きたくなるみち500選」にも選ばれました。また、令和元年には文化庁が選定する「歴史の道百選」に選ばれた、伝統が受け継がれ続けている道です。
ーー ボランティア活動として始めた土佐塩の道を守る活動。ビジネス視点を取り入れるに至ったきっかけは?
活動に参画した当初から課題は山積みでした。塩の道を維持するために、地元の会員らは、1年の大半をコース整備という重労働に時間もエネルギーも奪われている状況でした。すでに高齢化の波は押し寄せてきていて、年々メンバーは減っていき、負担は増える一方で、自分も含めて会員たちはどんどん疲弊してゆくという流れでした。しかもボランティア精神で成り立っている運営は明らかに大赤字という中で、目先の事業をこなしながら、解決の糸口をひたすら探す日々でした。そんな中でなんとか約15年、活動を継続してきました。
一方では、道は数々の歴史遺産に認定され、地元の中学生や自衛隊員によるボランティア支援など、少しずつ周囲からの協力も得られるようになり、SNSの波にも乗って若年層のファンも増えてきました。最近は活動の趣旨に賛同してくれて「想い」のある若い会員も入ってきて、ようやく長いトンネルの出口が見えてきたように感じています。今の流れを継続させるためにも、「ビジネス化」を決心しました。
ビジネス化に向けたチャレンジの軌跡
ーーこうちスタートアップパークの起業支援プログラムで得られた学びや気付きはどのようなものですか?
プログラムでは、自分が抱えていた課題の多くが明確になりました。これまで行ってきたボランティア活動では、コスト計算を十分に行えていないままに活動を展開していましたが、ビジネスの基本を学ぶことで、現在の活動において、どのくらいの赤字が出ているのか、どうすれば黒字化することができるのか、改めて数値化することができました。そういったビジネスの基本はもちろん、文化資源を高付加価値の商品に変える手法や、BtoBtoCという事業者と連携した新しい販路拡大の手法などを学ぶことができました。
これまで地域のことは知っていても、ビジネスについては全くと言っていいほど、知識がない状態でしたので、乾いた土に水が染み込むように研修で得た学びは深く私自身のビジネスの土台になっていったような気がします。
この研修がなければ、また、メンタリングがなければ、ここまで短い期間でビジネスの土台を作ることはできなかったと思います。メンタリングを担当いただいた起業コンシェルジュの佐藤さんには、本当に本当に感謝をしています。
ーー事業化に向けてどう準備を進められていますか?
2025年春の開業を目指して準備しています。土佐塩の道はもちろんですが、古道を通してつながる地域の文化や、伝統的な人々の暮らしに触れられるプログラム、教育や研修旅行、担い手育成につながる施策も検討しています。物部川流域を核にした新たなサービスを展開することで、周辺地域の課題解決と魅力発信を同時にしていきたいと考えています。
目指すゴール
ーー最終的に目指しているビジョンは何ですか?
その土地が持つ伝統と文化を守り、次世代に繋いでいくこと。そして、経済的にも自立できる仕組みを作ることです。
もう一方で、今の私は、人とのつながり、人との交流から生まれる喜びに、自分自身の生きがい、やりがいを強く感じています。私自身が大事にしている「人との繋がり」からビジネスが生まれ、経済が循環していくような仕組みや、仲間や地域住民がそれぞれの得意分野で「活躍できる場」を作っていきたいです。高知県の魅力を国内外に広げ、多くの人に訪れてもらうことで、地域全体の活性化を図りたいですね。
サポート担当の声
株式会社アルファドライブ高知 プロジェクトマネージャー
こうちスタートアップパーク 起業コンシェルジュ
佐藤 大嗣

私も実際に塩の道を歩かせていただきました。山道が整備され今の状態に至るまでの創設者の公文寛伸さんの想いと情熱、行動力を強く感じたことを覚えています。そしてその思いを受け継ごうとチャレンジしている近藤さんの姿勢に大変感銘いたしました。取り組みを継続するため、ビジネスとしていく必要があるという考えにも共感しております。ぜひこの素晴らしい魅力をより磨き込んで、多くの方々に届けてほしいと願っています。
そして、近藤さんが取り組まれていることは高知県はじめ、地域の至る所が抱える共通の課題だと考えていますので、近藤さんの取り組みが道を明るく照らす存在になってくれることを期待しています。心より応援しております。
近藤氏のプロフィール
土佐塩の道 保存会
近藤かおり

兵庫県神戸市出身。中学時代から高校時代まで高知県香美市土佐山田町で過ごす。その後、大学進学と共に神戸に再び出るが、20数年前に高知にUターン。香美市や香南市の観光協会での勤務をへて、現在は、香美市役所の地域づくり支援員として、主に物部地区で観光コンテツづくりや地域プロジェクト作りに携わる傍ら、今の活動をさらに発展・継続させるための起業準備に勤しんでいる。高知県主催・弊社グループ運営のこうちスタートアップパークに参加。
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