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2025/6/5

ニッポン高度紙工業が「新規事業開発力養成プログラム」を実施。その背景にある危機意識と成果

ニッポン高度紙工業株式会社様は高知県高知市に本社を置く、電池・コンデンサのセパレータ製造メーカーで、アルミ電解コンデンサ用セパレータで世界No.1のシェアを持つ会社です。

AlphaDrive高知は2021年1〜6月、ニッポン高度紙工業株式会社様にて、「新規事業開発力養成プログラム」を行い、新製品開発室・技術開発部・営業部の3部門から約30名・10チームが参加し、顧客課題起点の新規事業開発のスキルとマインドについての研修を行いました。

今回はプログラムの導入を決定していただいた取締役の高橋様と、プログラムにご参加いただいた全10チームのうち、2チームに取り組みについてお話を伺いました。

まずは取締役の高橋様に、今回のプログラムの導入の目的などについてお聞きしました。

高橋 寿明 様(取締役・管理部長)
株式会社アルファドライブ高知 宇都宮竜司

ニッポン高度紙工業が「新規事業開発力養成プログラム」を実施。その背景にある危機意識と成果

既存事業が順調な一方で感じていた危機意識

AD宇都宮:今回弊社に依頼いただいた経緯をお聞かせ下さい。

高橋様:2019年に高知県主催でAlphaDriveさんが運営する社内起業家育成プログラムの案内があったときに、弊社社員を2名参加させていただきました。そのスタートセミナーの際にAlphaDrive代表の麻生さんの講演の中で、「どんな人でも顧客と仮説の回転を回し、仮説検証を300回繰り返せば新規事業ができる」という話に非常に感銘を受けました。

過去に自分も顧客と仮説のサイクルを回して事業が形になっていった経験をしていたので、この方法論を身につければ、自社でも新規事業を生み出せるのだと自信をもって思えたので、弊社社員を高知県主催のプログラムに参加させました。特に技術者に、この考え方を深く学んでほしいと思いました。

AD宇都宮:従業員の方に新規事業開発のスキルを身につけてもらいたいのはどうしてですか。

高橋様:弊社は狭いマーケットの中のニッチな領域でビジネスをしている企業で、今年で創立80周年になります。セパレータというひとつの事業でここまで成長できたことは恵まれており、ニッチなマーケットなので少数の顧客との接点が非常に深く、こちらから働きかけなくとも顧客からオーダーや新製品開発につながるニーズがどんどん舞い込む状況です。

顧客のニーズを捉えて量産化に結びつけることが主業務になっており、このままではいけないと感じています。

これまでは第二の事業の柱がない状態で、新規事業はできかけてはつぶれての繰り返しでした。強い意志を持って第二の柱を作ろうという話は経営陣からは出ることはありましたが、そのために社員をどう教育していくか、人材育成も事業開発も、必要性は理解しつつも、既存事業がうまくいっている中で、どうしても優先順位が下がってしまう状況でした。

そんな中で、今のメンバーの強化が必要だと感じていたところ、高知県主催のプログラムでAlphaDriveさんのことを知り、実際にプログラムに参加した弊社社員2名の育成にも成果があったことから、改めて個別にノウハウを学びたかったのが今回依頼した経緯です。

「自分が良いと思うモノを作ればそれで良い」という考え方から脱却するきっかけに

AD宇都宮:今回6ヶ月間の研修のプロセスや成果発表を見ての手ごたえはありましたか。

高橋様:このプログラムの全体像についてAlphaDrive高知さんと協議したときに、6ヶ月後のゴールイメージを「参加者の口から『顧客』や『課題』というキーワードが日常的に出ていること」、要は顧客課題起点で物事を考えることを身につけていることとしました。

そんな中で、実際に成果発表会の中では「こんな人に話を聞いて、こんな課題を発見しました」「顧客に話を聞いてみたら、当初の想定は全く覆されました」などといった声が聞こえてきました。自分が良いと思うモノを作ればそれで良いという考え方から脱却するきっかけになったように思います。

また、当初は「モノを作る前に顧客に会いに行く」という考え方について、納得感が得られないメンバーも多かった印象ですが、6ヶ月間の活動を通じて、技術ではなく顧客の課題起点で考えていくという方法論が腹落ちしたメンバーが増えたように感じられたことも成果です。

AD宇都宮:参加した約30名が日々の業務に戻っていますが、今後どのような経験を積んでいってもらいたいですか。

高橋様:コロナの影響で難しいところもありますが、本来であればお客様と対面で対峙して「これはいけない」、「使えない」などのダメ出しをいただくことが必要だと考えています。オンラインと比べて、対面でストレートなフィードバックを受けると、その受け手に重みも伝わります。

このような経験を積める環境作りにも取り組んでいきたいです。今回のプログラムでは、あえて関連部門の約30名全員参加としました。新製品開発を専門とするメンバー以外にも、技術開発や営業のメンバーも含めて全員参加だったので賛否両論ありました。

ただ、その結果、新製品開発や課題解決に意欲を持っている社員の発掘にもつながりました。このように、社員が前向きに自分の考えを実現化して行動することを支援していきたいです。次の展開を人事課で検討しています。

こうした人材育成の最終ゴールは次の事業の柱を準備していくことです。新規事業で成功するのは1000に3つくらいだと思います。いち早く人材を育て、新しい事業に挑戦し、既存事業に並ぶような事業を立ち上げることを目指しています。

(新規事業開発力養成プログラムで実施した研修の様子)

何が問題なのかから一緒に考える

AD宇都宮:今回、弊社で運営させていただいたプログラムはいかがでしたか。

高橋様:今回の御社のプログラムの進め方は、私も含めて勉強になりました。弊社にとっては、今までにない研修の進め方でした。これまでも外部の方に研修の講師をお願いしたこともありましたが、一方的に教えてグループを作り、分科会をやって発表して終わりということが多かったです。ただ御社の皆さんは、集合型の研修に加えて、粘り強く個々にアプローチしてメンタリングをするという手法が斬新でした。

プログラムへの姿勢として、最初は後ろ向きだった社員も多くいましたが、AlphaDrive高知の皆さんは、一方的に指示をするとか、社員から出た意見を否定するという感じではなく、もし事業の検討が進んでいないとすれば、何が問題なのかを一緒に考えるところから進めてくれました。

研修を受けて、「一般論としては理解したものの現場でどう応用するかイメージが湧かない」というような不安の声があっても、メンターの皆さんがひとつひとつ解消してくれるので、疑問点を解決しないと前に進めない社員も徐々に前向きになっていきました。日々、社内人材の育成の取り組む私たちとしても、自社の社員がプログラムを通じて前向きになっていく様子はすごく勉強になりました。

AD宇都宮:弊社が大事にしている「人と企業の可能性を信じる」という姿勢を感じていただけたようでよかったです。

高橋様:自分の子供に勉強を教えるときに親がなかなか冷静ではいられないのと同じで、社内での人材育成においては、どうしてもメッセージがトップダウン、一方通行になりがちです。

AD宇都宮:まさにそのようなシーンこそ、私たちのような外部パートナーを活用いただくメリットを感じていただきやすいですね。

AD宇都宮:今後弊社に期待することがあれば教えてください。

高橋様:私たちにとっては、AlphaDrive高知さんは「顧客と仮説のサイクルを何度も回す」という体験をさせてくれた会社ですが、今後はより実務に近いところでサポートしてもらえると、成果に直結しそうだと考えています。

あとは、弊社と長い間関わりを持って会社の事業や組織風土を理解してもらっている中で、他社と比べたときに自社はどうなのか。時代の潮流を踏まえるとどうなのか。そういった視点でアドバイスをいただけると良いなと思っています。

AD宇都宮:ありがとうございました。御社の今後の発展に向けて、今後ともさまざまな形で関わらせていただけると嬉しいです。

【参加チームインタビュー Part1】顧客ヒアリングを重ね、自社高密度紙の新用途の可能性を発見

ニッポン高度紙工業株式会社様にて、2021年のはじめから約6ヶ月間で行われた「新規事業開発力養成プログラム」。新製品開発室・技術開発開発部・営業部の3部門から約30名・10チームが参加し、顧客課題起点の新規事業開発のスキルとマインドを学びました。

今回は全10チームのうち、2チームにお話を伺いました。

第1弾は、水蒸気バリア紙の製造技術の用途検討からスタートし、包装紙用途での技術活用の可能性を発見。初期顧客の獲得まで進めるという大きな成果を出すに至ったチームをご紹介します。

福永 了一 様(新製品開発室)
山岡 哲心 様(営業部)
原 有理 様(営業部)
株式会社アルファドライブ高知 篠田 善典

「とにかく実際に顧客に話を聞いてきてください」と言われて

AD篠田:どのようなプロセスで検討を進めていったのですか?

AlphaDrive高知さんの研修で、「とにかく実際に顧客に話を聞いてきてください」と言われて、最初はどうアクションすると良いかがわからなかったので、まずは自分のつながりのある人に声をかけてヒアリングするところからはじめました。最初の方はとりあえず聞いてみようかなという感じで、想定できるところには全部当たってみました。話題については、技術的なことに絞らず、高密度紙にどのような用途の可能性があるか、ざっくりした意見交換をしていました。

その中で高知県の包装紙会社様にご関心を持っていただき、高密度紙の包装紙への活用について、もう少し話をしていきましょうということになりました。今では試作品レベルでの商品価値の検証はクリアできたので、商業化の検討を進めています。

AD篠田:自社の技術を起点としながら、大勢の方と意見交換をして用途仮説の立案と検証を繰り返していく。このプロセスを着実に進められたことで成果にもつながりましたね。

「こうに違いない」という先入観を持たずにアプローチすること

AD篠田:6ヶ月間のプログラムを通じての成果や学びについて教えてください。

山岡様:「こうに違いない」という先入観を持たずにアプローチすることが大事であるということに気づきました。実際に様々な方にヒアリングをする中で、できるだけ先入観を排除して話を聞いていくことで、自分たちが考えてもみなかった用途が見つかることが何度もありました。

原様:私も同じで、仮説を立てたら実際に関係者に話を聞いて検証してみないといけないことがよくわかりました。当初想定していた仮説と実際の声が大きく異なることもありました。

AD篠田:高い技術力を強みとし、技術起点で物事を考えてこられた中で、「モノを作る前に顧客に話を聞いてきてください」と言われて戸惑いもあったと思います。その点はいかがですか?

福永様:今までの業務は技術面に特化しており、「良いモノができれば売れる」という意識でいました。しかし実際のところ、モノは完成しても販路がないということがありました。技術面に特化していたところから、プログラムでの経験を通じて考え方が解き放たれて、ゼロベースの思考になりました。製品を必要とするお客様が本当にいるのかということが大事であるということは、今回の経験を通じて実体験として理解できました。

AD篠田:研修で学んだことについての活用イメージを教えて下さい。

山岡様:たとえば営業の業務では日々お客様から問い合わせをいただきます。その中には「こういうモノが欲しい」といった内容もありますので、そのニーズをより具体的にするために、質問を繰り返すこと、お客様が欲しているモノ、困っているポイントを見極めることができるようになったことが今回の研修を活用できている点です。

(NewsPicksの学習動画を題材としたワークショップの様子)

AD篠田:チームの皆様にはNewsPicksの学習動画サービスを活用したワークショップに何度も参加いただきましたが、そこでの学びは活かされましたか?

福永様:NewsPicksのMOOCは、見始めると面白くなって、今では興味分野が広がりすぎてしまったと思うくらいです。最近の世の中の状況について知らないことが思ったよりも多くて、DXやSDGsといったテーマが自分の働く業界にどう影響するのかということを考えるきっかけになりました。

私の所属は新製品開発室なので、新製品開発のテーマとしてSDGsは意識しています。新たな顧客掘り起こしもSDGsの視点からから攻めていこうと考えています。実際にお客様にもヒアリングにも行って、これまでよりも深い話ができています。

【参加チームインタビュー Part2】ユーザーから深いニーズを聞けたことで、既存製品の課題解決へのヒントに

インタビュー第2弾は、脱プラスチックの流れで紙ストローが使われるようになってきた中、既存の紙ストローの課題に着目し、ユーザーの深いニーズを見つけることができたチームを紹介します。

松岡 学 様(技術開発部開発課)
武田 素明 様(技術開発部技術課)
石ヶ休 正樹 様(技術開発部開発課)
株式会社アルファドライブ高知 篠田 善典

自社の紙ならではの強みに着目

AD篠田:新規事業アイデアを検討する中で、紙ストローに着目されたのはどのような経緯でしょうか。

武田様:実際に紙ストローを提案したのは松岡さんですが、身近な製品でもあるし、私自身も紙ストローを使った経験があったので製品化のイメージもしやすいと感じました。

子供って、ジュースを飲むときにすごくゆっくり飲んだりしますよね。うちの子が使った紙ストローがジュースを飲んでいるうちにボロボロになったという実体験があります。スムージー屋で飲み口がふやけて果肉も吸えない状況になってしまって、子供ももう飲みたくない、使いたくないという状況を経験しました。

AD篠田:課題をご自身が感じたのですね。紙ストローについてはどんな方にヒアリングしましたか。

松岡様:私がよく行く飲食店で紙ストローを使っているので、その導入を決めた責任者の方や、紙ストローを導入している高知県内のホテルの担当の方です。あとは自分たちの職場や家庭など、身近な人にもヒアリングしました。

私たちは、当初は一般の紙ストローより、水に対する強度が高い物にニーズがあるのではと考えていましたが、ホテルの紙ストローを選定された女性に、「口紅がつきにくいこと」という、女性ならではの目線を教えていただきました。弊社の製品であれば表面が滑らかで質感がプラスチックに近いので、口紅がつきにくいというメリットがあることに着目できました。

AD篠田:ヒアリングを通じて深い顧客ニーズに気づくことができましたね。その後は順調に進んでいったのですか?

松岡様:今度はコストの壁にぶつかりました。この先も紙ストローの方向で検討を続けるのか悩み、高コストが受け入れられそうな医療現場での用途検討にも取り組みましたが、良い事例が見つかりませんでした。

その時にメンタリングで篠田さんが言ってくれたのが、高コストを吸収するような付加価値が作れないかということでした。これがきっかけとなり、過去のヒアリング内容を振り返ったら「紙ストローへの口紅付着の課題」がありました。また、メイドインジャパンというメリットがあることにも気づけました。ストローは口に入れるモノなので、やはり日本製のモノに安心感があります。

その他にも、コスト面については、既存のストローの一層だけを弊社の紙にすれば高価な紙の使用量も少なくコストも抑えられることに気づきました。

武田様:振り返ってみると、このコストの壁にぶつかった時のメンタリングの空気は重かったですね。その壁を超える方法が見つかった後は、試作品開発も含めて一気に検討が進んでいきました。

顧客の生の声を聞いて深掘りすること

AD篠田:プログラムを振り返ってみて一番の学びや成果は何ですか?

松岡様:いろいろな顧客の生の声を聞いて深堀りすることが重要だということを再認識しました。今回の提案内容についても、女性目線の意見に出会えたからこそ具体的な製品アイデアがまとまりましたが、自分自身を含め男性目線だけで考えていてはその課題には行きつきませんでした。いろんな人に聞く、性別、年齢、会社の規模関係なく様々な方が顧客になりうるのだと考えて進めなければいけないと感じました。

石ケ休様:正直、紙ストローにテーマが決まったときは、水に強ければいいという考えしかなく、飲み口がつぶれるとか、水に弱いくらいの課題しか思いつきませんでした。実際にヒアリングしていくことで口紅の付着などの課題が見つかり、いろいろな見方があるということが勉強になりました。

武田様:ヒアリングだけでなく、実際に試作品を作って顧客と話ができたのがよかったです。実際に試作したストローを触ってもらって意見交換ができました。

AD篠田:皆さんには「できるだけ作らないように」とお伝えしていましたが、御社のようなメーカーさんの場合、むしろ試作品を作ってしまった方が早いということがあるのは、私としても学びでした。

(プログラム6ヶ月目に開催された成果報告会)

AD篠田:今回のプログラムでの学びは、今後どのような業務シーンで活用できそうですか?

松岡様:私たちは技術開発部なのでお客様との打ち合わせをする機会は多く、仮説検証のサイクルを回す考え方は打ち合わせで使えそうです。実際に今でも新製品の開発で顧客が実際に困っていることを検証するのに役立っています。自分も今まではお客様に質問するだけで終わってしまっていましたが、今後は質問したことの答えに対して、なぜかを深掘りして質問して仮説を検証していくことを意識してやっていきたいです。

AD篠田:AlphaDrive高知として実施させていただいたプログラムについてご感想をお願いします。

松岡様:今まで全然学んだことがなかった、ヒアリングの方法が学べたのがよかったです。会社に入って「顧客に会いに行け」と言われることはあっても、その具体的な手法は知らなかったので。メンタリングについては、コストの壁にぶつかったときに、篠田さんにアドバイスしてもらって、良い形で考え方を切り替えられました。

武田様:研修を受けるにあって、6ヶ月先の成果報告会で「役員の前で成果を発表する」ということが決まっており不安がありましたが、その中で、毎月1回メンターの方とお話をして、そこまでの検討内容の整理や次にやるべきことの明確化ができました。

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