2025/6/5
新規事業立ち上げを学び、自社の強みを知った。本山印刷の挑戦──イノベーション人材育成プログラム受講者インタビュー

AlphaDrive高知は高知県内企業の人材育成と課題解決を目的に、2022年7〜12月、県内企業を対象とした『新商品・新規事業開発のスキルとマインドを身に付ける イノベーション人材育成プログラム』 を開講しました。
本企画では、参加者への「受講者インタビュー」をお届けします。
今回は、創業80年を超える老舗、本山印刷株式会社(高知市)にて新規事業創出に奮闘する本山珠里さんです。プログラムの受講前から、すでに新規事業に取り組んでいた本山さんが、プログラムから改めて何を学んだのか聞きました。聞き手はAlphaDrive高知の橋詰曜世がつとめました。
【プログラム概要】
新規事業開発に取り組む意義やポイント、顧客と課題の見つけ方、効果的なヒアリング、プロトタイピングの手法からビジネスモデルの作り方、効果的なプレゼンまで、新商品開発や新規事業開発のスキルとマインドを学ぶ半年間のプログラム。
伴走型のメンタリングを受け、最終日は受講者が新規事業・新サービスを発表する。参加特典として、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」も活用できる。
【参加企業情報】
企業名(団体名):本山印刷株式会社
従業員数:37名(平成26年7月時点)
業種:印刷・出版
【受講のきっかけ】
・別のプログラムに参加して、もっと勉強したいと思った
・新規事業のプロから「惜しい」と言われた
【プログラムを通して学んだこと】
・新規事業立ち上げの流れとポイント
・既存事業の改善点
・商談時の提案を課題解決型にブラッシュアップ
・無償で提供しているサービスの見直し
【新しく生まれた新規事業アイデア】
体験型印刷工房
観光客が旅の思い出を形にできるサービス。利用者はデザインから印刷までの制作工程を体験できる。創業以来、本山印刷が大事にしている「ものづくりや印刷の楽しさを伝える」を体現するための場所でもある。
新規事業立ち上げの「正しい方法」を学びたい
──まずは、今回のプログラムにご参加いただいた理由を教えてください。
AlphaDrive高知のプログラムを受けたのは今回で2回目なんです。1回目は聞くだけで精一杯でしたが、もう一度参加すればもっと吸収できるかなと思い、参加しました。
1回目の参加は、当時取り組んでいた新規事業がうまくいっておらず、立て直すためのヒントがほしかったからです。新型コロナが流行する前でした。
本山印刷は昭和13年創業の老舗企業ですが、20年ほど前からパソコンやプリンターの普及、ペーパーレス化の影響で事業が縮小傾向にありました。さらに、安さを売りにしたネットプリントの台頭が追い討ちとなり、生き残るためイノベーションが必要な状況に追い込まれたのです。
そこで始めたのが、これまで続けてきたBtoBビジネスとは違う、一般消費者向けの店舗型印刷サービス「PAPER MESSAGE」です。大手では採算が合わないような少部数印刷ができる強みを活かし、店舗に立ち寄ったお客さまにオリジナルのグッズ制作を楽しんでもらえるお店です。お客さまは紙の見本や印刷サンプルを実際に見て、気に入ったものをその場でオーダーできます。レターセットやメモ帳、付箋など紙雑貨も買えます。

今でこそ高知のメインストリートや東京、大阪にも店舗をオープンし、オンラインショップも運営していますが、事業立ち上げ当初はずっと赤字でした。本業に支えられながら、なんとか運営している状態で、何をどうすれば安定したビジネスがつくれるのか、模索する毎日でしたね。
周りには私と同じように新規事業立ち上げに取り組んでいる人がおらず、とにかく自分で何とかするしかないと情報を集めていました。そんなとき見つけたのがAlphaDrive高知だったのです。
──そこでプログラムに参加して、さらに勉強をするために今回のプログラムに参加されたのですね。
最初に参加したプログラムで講師としてお話をされていた、AlphaDrive代表取締役社長の麻生要一さんからの言葉も、参加のモチベーションになったんです。「PAPER MESSAGEはすごいけど、なんか惜しいですよね」という言葉です。
麻生さんは数え切れないほどの新規事業立ち上げに関わっている方で、いわば新規事業のプロです。「全然ダメだよ」という反応ではなかったのでうれしかったですが、同時に、何が惜しいのかをもっと知りたいと思いました。もう一度プログラムに参加することで、 何かヒントが見つかると思ったのです。
同期から刺激をもらい、事業プランを練り直し
──今回、最終日には新規事業のプレゼンをされました。どんなサービスを提案したのでしょうか。
体験型印刷工房。高知への観光客が旅の思い出を形にできるサービスです。
本当は以前からやりたかった事業でしたが、コロナの影響もあって着手できていませんでした。しかし、他の参加者や、伴走支援してくれたAlphaDrive高知のメンターから刺激をもらって、思い切って事業プランをつくることにしました。小さくまとまった事業だと物足りないし、それで終わらせるのは悔しいと思って、本当にやりたいことを突き詰めて新しいビジネスプランを組み上げましたね。

背景には、ものづくりや印刷の楽しさを伝える、という弊社のビジョンを体現したいという気持ちもありました。お客さまに楽しさを伝えるには、お客さま自身でデザインしたものが目の前で白い紙に落とし込まれている様子を、実際に見てもらうのが一番だと思ったのです。
新規事業立ち上げのセオリーを学び、既存事業改善のヒントを得た
──プログラムを通して学んだことを教えてください。
まず学んだのは、新規事業立ち上げのセオリーでした。1回目のときはほとんど理解できなかったのですが、今回はちゃんと吸収できました。
「PAPER MESSAGE」を1人で立ち上げたときは、「こんなサービスが求められているに違いない」という思い込みからスタートしました。しかし実はその始め方はNGなんですよね。だからこんなに迷ってしまったんだと納得しました。今もう一度始めるなら「300人の顧客へのヒアリング」からスタートすると思います。

他にも、新規事業立ち上げの流れとポイントを一通り把握できたので、もう手探りで不安を感じながら進むことはないでしょう。
また、既存事業の改善点についても気づきがありました。
たとえば、顧客ヒアリングのノウハウは、接客時に有効だということがわかりました。これまでは自分が思いついたアイデアをベースに「こんなものはどうでしょう?」とお客さまとコミュニケーションを取っていました。しかし今なら「今までこんなことをやったことはありますか」「どこに課題を感じていますか」といった課題の確認から会話を始めていきます。
あれをつくろう、これをつくろうとその場でお客さまが盛り上がっても、あとから冷静になると「あれ、これ本当にいるのかな?」とわからなくなってしまうことがありました。課題のヒアリングから入ると、そういったズレがなくなります。課題解決につながるものづくりができるようにもなるので、信頼獲得につながり、他社との差別化にもなると感じています。
高知という地域性を活かしたビジネスを
──今後のビジョンを教えてください。
本山印刷は、創業以来、高知県に拠点を構え、地域貢献を意識して仕事をしてきました。地方に拠点があるという利点を活かして、自由で気軽なサービスが提供できる会社になりたいです。
本来であれば印刷サービスの需要は東京・大阪といった都市部に多いです。しかし高知には、高知でしか得られない情報や高知ならではのニーズがあります。県内のお客さまには引き続き、今の生活に必要なものや、ちょっと都会を感じられるものを提供し、都会のお客さまには地方の自由さや気軽さといった、高知の空気を感じてもらえるものを提供できればと思っています。
今後も我々の強みを活かしながら高知のためにできることを続けたいです。

──これからAlphaDrive高知に期待することはありますか?
地方にいながら学べる機会を提供してもらえるのは非常にありがたいと思っています。引き続き今後も、我々のような会社に学びを与えてくれる存在でいてほしいです。
次回のプログラムにも、ぜひまた参加させていただきます。前回より今回の方が得るものが大きく、私自身の成長にも気づくことができたので、次回はさらにたくさん学びがあり、今よりもっと成長している自分を感じられるのではと思っています。
地方で頑張っている会社のなかには、補助金を獲得するために新規事業を始める会社もあります。しかしそれでは絶対にうまくいかないと思います。どうせ始めるならちゃんとした手順やノウハウを学ぶのがおすすめです。そのためのプログラムとして、AlphaDrive高知の社内起業家育成プログラムはピッタリだと思います。
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