2025.10.06
【イベントレポート】行政職員向けオンラインセミナー「地域から新規事業を生み出すプログラム設計のポイントとは?」を開催しました

2025年8月1日(金)に、AlphaDrive REGION(アルファドライブリージョン)主催のオンラインセミナー「地域から新規事業を生み出すプログラム設計のポイントとは?」を開催いたしました。
今回は、令和5年度より新規事業創出プログラム「SPARK」を実施している豊田市 次世代産業課 主査 玉手翼様をゲストに迎え、プログラム設計のポイントや実際の手応えについてお話しいただきました。地方における新規事業創出の最前線でご活躍されている豊田市が、企業と行政が一体となって地域をどう変えていくのか。その実践から得られた学びを共有いただきました。
登壇者プロフィール
豊田市 次世代産業課 主査 玉手 翼 様

愛知県豊田市出身。新卒で豊田市役所に入庁後、地域活動(自治区や地域会議)の支援を行う部署に配属。企業支援に携わりたいという思いから中小企業診断士の資格を取得し、産業部門に異動。以降、一貫して産業部門で従事し、労政、企業誘致、企業支援、企業活動の調査、行政計画の策定等を担当。業務の傍ら2019年度から事業構想大学院大学に通学し、新規事業創出方法について学ぶとともに、起業家との交流を行う。2021年度に現在の次世代産業課に異動。市内製造業者による新規事業創出の支援、オープンイノベーションの推進等の業務に携わる。
株式会社アルファドライブ グループ執行役員 宇都宮 竜司

愛媛県出身。京都大学大学院工学研究科化学工学専攻修了。株式会社リクルートホールディングスに出向。スタートアップ支援プログラムのコミュニティマネージャーとして総計300チーム以上を支援。2017年に高知県に移住し、IT関連企業にて事業開発部長 兼 経営企画室として新規事業開発の部門の立ち上げ、複数の新規事業の企画・推進、全社経営戦略の策定等を行う。地方の中小企業における新規事業開発を活性化し、地域経済の成長に貢献したいという思いから株式会社アルファドライブに入社。2019年、株式会社アルファドライブ高知の代表取締役に就任。2025年、株式会社アルファドライブのグループ執行役員に就任
第一部 「豊田市 次世代産業課における新規事業創出プログラム「SPARK」の取り組みについて」
ものづくり創造拠点「SENTAN」と地域産業支援
玉手様からまずは、豊田市が取り組む「ものづくり創造拠点 SENTAN」について紹介がありました。この施設は、市内のものづくり企業等を支援するために設立され、交流スペースやセミナールーム、子ども向けのサイエンスルームを備えています。さらに3Dプリンターやレーザーカッターなどの最新設備を整え、試作開発や新たな挑戦を後押ししています。豊田市の強みであるものづくりの「技術・企業・人材」が集まる場として、次世代産業を育む重要な役割を担っています。

「SPARK」の特徴とプログラム設計
続いて、新規事業創出プログラム「SPARK」についての紹介です。本プログラムは、玉手様が事業の構想から今日に至るまでを推進してこられており、AlphaDriveが事業初年度から運営を担当しています。下記のように、専門性と実践性を兼ね備えた仕組みが特徴です。

・専門家による伴走支援
参加企業が抽象的なアイデアを具体的な事業計画に落とし込めるよう、専門家の知見を活用。新規事業に挑む企業の不安を和らげ、確実に前進できるサポート体制を整えています。
・学びと実践の融合
「そもそも新規事業をどう開発すればよいのか」という疑問に応え、体系的に学べる仕組みを用意。知識の習得だけでなく、事業計画策定から成果発表まで実際に取り組むことで、学びを自社の事業に還元できる設計です。
・持続可能な支援体制
単発的なマッチングではなく、組織体制づくりや人材育成といった深い課題にも対応。終了後も企業が自走できる力を養い、地域全体の産業発展につながる仕組みを築いています。
「SPARK」は2段階構成で実施しており、第1ステージでは誰でも参加できるセミナーを通じて知識を習得し、第2ステージでは選抜された企業が伴走支援を受けながら事業計画を完成させ、成果を発表するという内容になっています。

2025年度「SPARK」 キックオフイベントの様子
新規事業創出プログラム「SPARK」2025年度のイベントのご案内:
https://spark.toyota-sentan.jp/event
新規事業創出プログラム「SPARK」 2024年度 成果発表会「DemoDay」実施レポート:
https://spark.toyota-sentan.jp/news/92zpOFAu
背景にある危機感と挑戦の原点
玉手様がSPARKを立ち上げようと思った背景には、2008年のリーマンショックによる「トヨタショック」があります。自動車産業に依存する豊田市の企業は深刻な影響を受け、「第二の柱を築きたい」という声が高まりました。さらに2013年、姉妹都市デトロイト市の財政破綻を目の当たりにし、産業構造の転換を急ぐ必要性を強く意識するようになったといいます。

プロジェクト成功の4つのポイント
玉手様はプロジェクト運営において特に意識している点として、以下の4つを挙げました。
コンセプトの明確化と発信
持続的な仕組みの構築
PDCAサイクルの実践
事業全体を俯瞰したマネジメント
参加企業の声を定期的に拾い、改善につなげることがモチベーションとなり、プログラムの進化につながっていると語りました。

このように第一部では、豊田市が抱えた課題とそれに応える具体的な取り組み「SPARK」の全体像が示されました。玉手様の実践を通じ、行政と企業が手を取り合い、地域の新しい産業の芽を育てる仕組みづくりの重要性が伝わるセッションとなりました。
第二部 パネルディスカッション
豊田市 次世代産業課 玉手様と、AlphaDrive REGION 宇都宮によるパネルディスカッションでは、現場での学びや運営上の工夫について意見が交わされました。本レポートでは、ディスカッションの中で会話された要点をまとめています。

現場の声が持つ説得力
議論の最初のテーマは「現場の声を聞く重要性」でした。玉手様は、プログラム企画の初期段階で市内企業へのヒアリングを重視した理由について、「企業支援に携わりたいという想いが根底にあり、何より現場の声を知っているのは担当者である自分だけ」という点を挙げました。机上の議論ではなく、企業の声を根拠に提案することで、組織内部での説得力も大きく高まったと振り返ります。
コミュニティを広げる工夫
SPARKは3年目を迎え、参加企業同士のコミュニティが継続的に育っています。玉手様は「キーパーソンを意図的に探したのではなく、あらゆる手段を使って声をかける中で自然に出会えた」と語ります。行政や支援機関だけでは届かない層にも、民間企業同士のネットワークが広がり、相乗効果を生んでいるのが特徴です。
単年度事業の限界を越える工夫
単年度事業にありがちな「支援が続かない」課題についても議論がありました。以前は2年間の伴走支援を行っていたものの、長期化でマンネリ化する懸念があったといいます。そこで現在は1年目で自走できる企業は任せ、継続した支援が必要な企業には2年目にオープンイノベーションを活用して支援する枠組みに変更。企業の状況に応じた柔軟なサポートへ進化しました。
参加者主体の自走力
プログラム卒業後も、参加者同士が横のつながりを持ち、相談や実証実験の協力を続けている様子が見られます。玉手様は「1年目である程度成果を出した企業は支援がなくても活動を続けられる。その一方で、自力では難しい企業を継続して支援する仕組みを意識している」と語りました。

行政職員の方へのメッセージ
最後に玉手様は、「産業振興や企業支援の仕事は自分にとって大きなやりがい。今日ご参加の皆さんも同じ想いを持つはず。一緒に頑張っていければ嬉しい」とエールを送り、セッションを締めくくりました。
第三部 セッションまとめ
本セミナーのまとめとして、AlphaDrive REGION 宇都宮より、今回の取り組みを振り返る総括が行われ、行政と企業に共通する事業開発の本質をお伝えさせていただきました。
事業開発は「顧客と課題」から始まる
新規事業を立ち上げるうえで最も重要なのは、顧客と課題を明確にすることです。誰のどんな課題を解決するのか、どんなニーズを満たすのかを問い続けることが、成功の出発点となります。
この視点は、玉手様のお話とも重なります。行政と企業、立場は違っても事業開発における基本的な姿勢は共通していることが明らかになりました。

顧客と向き合う姿勢は行政も同じ
宇都宮からは「民間企業の新規事業支援では、仮説を立てたら必ず顧客のもとで検証することが重要」との指摘がありました。会議室や上司との相談だけでなく、顧客との対話を重ね、仮説検証を高速に回すことが成功のカギとなります。
この姿勢は行政の事業企画においても同じです。統計や専門家の意見は必要ですが、それだけに依存すると「顧客不在の企画」に陥ってしまいます。現場の「生の声」を把握することこそ、企画を実現させるための強力な武器になるのです。

行政企画における3つのポイント
玉手様の話を踏まえ、宇都宮より行政の事業企画を成功させるための3つのポイントを整理してお伝えさせていただきました。
事業の目的やゴール、ターゲット(参加者)を明確にすること
架空の顧客(参加者)ニーズではなく対話を通じて得た実在するニーズを押さえること
コミュニティ形成を通じて事業年度で途切れない相互支援ネットワークを形成すること
これらを実現するには、実際の顧客ニーズに基づいた企画設計が不可欠であり、行政・企業どちらにとっても変わらない本質だと結論づけました。
まとめ
「顧客と課題を大切にすること」それは、行政における事業企画にも、企業の新規事業開発にも共通する普遍的な視点です。AlphaDrive REGIONからの総括として、この考え方を行政職員の皆さまに共有できたことは大きな意味を持ちました。今回のセッションは、行政現場で活かせる具体的なヒントが詰まった学びの場となりました。
さいごに
AlphaDrive REGIONでは、地域での新規事業創出やオープンイノベーション、行政向け人材育成など、多岐にわたる分野で皆様をご支援しています。今後も全国の自治体や企業の皆様が新規事業開発を成功できるよう、事例情報と実践的なノウハウをもとに、皆様の課題解決に向けた最善のパートナーとなることを目指していきます。
もしご関心をお持ちいただけましたら、ぜひ一度、お気軽にお声がけください。
豊田市 新規事業創出プログラム「SPARK」の詳細はこちら
https://spark.toyota-sentan.jp/